「生きものの創造」
1章20~23
「神は言われた。『生き物が水の中に群がれ。鳥は地の上、天の大空の面を飛
べ。』神は水に群がるもの、すなわち大きな怪物、うごめく生き物をそれぞれに、また、翼ある鳥をそれぞれに創造された。神はこれを見て、良しとされた。神はそれらのものを祝福して言われた。『産めよ、増えよ、海の水に満ちよ。鳥は地の上に増えよ。』夕べがあり、朝があった。第五の日である。」
原初史物語の天と地の創造の第五の日は生きものの創造。生きもののうち、海の中の生きものと、大空を飛ぶ生きものが言及される。
原初史物語において海と大空は水を置く場所。その「水」であるが、原初史物語においてすでに確認してきたことだが、地に壊滅を生じさせ、混沌をきたらせ、地の上の生きものの命を死滅せしめる原因となるもの。したがって、地の上の生きものにとって「水」の置かれている所は恐怖を感じさせる所。
そうすると、この原初史物語の流れの中で、この第五の日の「海の中の生きもの」と「大空を飛ぶ生きもの」の創造は、地の上の生きものにとって次のことを語るものではないかとおもわれる。すなわち、
「水」が置かれ恐怖を感じさせる海と大空には神が創造した生きものが満ちており、それらは神の良しとされたものであって、地の上の生きものに対し恐怖を与えるようなものではなく、むしろ、地の上の生きものにとって、地の上の生きものと平和的に共存共生する仲間である。原初史物語の作者はここでこのように語っているのではないかと推測される。
ここには、いまひとつのことが語られているようにおもわれる。
この後、神による人の創造が語られるが、人の創造よりも前に神によるいろいろな生きものの創造があって、すなわち、海の中の生きもの、大空を飛ぶ生きもの、そして地の上の生きものの神による創造があって、人の創造はそのいろいろな生きものに満ちている環境がすでにあるその中でなされる、こういう次第となっている。つまり、人は備えられた最良の環境の中に迎えられる形で神によって創造される。
原初史物語のこの後の展開はこうなっている。このような神の良しとするいろいろな生きものに満ちている最良の環境、これは人が造ったのではなく、神によって与えられたものであるが、原初史物語の作者はこの後創世記6章からの「洪水物語」において、この最良の環境を人が破壊するに至ると語る。
つまり、原初史物語の作者は、人は自分に備えられ与えられた最良の環境を破壊する、これは重い犯罪的行為である、これを言うための準備として、神によるいろいろな生きものの創造が人の創造の前になされたと語る。ここはこう読むことができるのではないか。
原初史物語作者はこう語る1章20~23に続けて、神の天と地の創造の第六日の日の「地の上の生きもの」について語る、それが1章24~28である。